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水中ではしゃべれない?
水中トランシーバー「ロゴシーズ」開発のきっかけは、発案者である弊社の社員が当時10歳の娘と初めてダイビングをしたときに、水中で、「楽しいね」、「きれいだね」と言いあえないことに、残念な思いを抱いたことでした。
世界中がインターネットで繋がる時代に、水中ではすぐ隣にいる人とも会話できないということに、単純に疑問を覚えたのです。
ダイバーはなぜしゃべらないのか? 答えは簡単です。水中で呼吸するための道具を口でくわえているため、うまくしゃべれないし、空気中を伝播することが前提の人間の声は、水中ではうまく届かないのです。
だとしても不思議なのは、ダイバーは、なぜこんなにもあっさりと会話することを諦めたのかということですが、その理由もすぐに思い当たりました。声で会話できないという困りごとを解決する道具が無いからです。むしろ、言葉なんて必要ないのがダイビングのいいところだと思っている節さえあるのではないでしょうか。
ですが、水中での活動は一歩間違えると命の危険と隣り合わせのはずなのに、ごく簡単なハンドシグナルか筆談しかコミュニケーション手段がないなんて、それが楽しいレジャーダイビングのあるべき姿だとは到底思えませんでした。
「無いならつくらなければ!」
こうして私たちは、レジャーダイバー用水中通信機器の開発に乗り出し、製品名をLogosease(ロゴシーズ)と名付けました。古代ギリシア語で「言葉」を意味する「logos」と、英語で「海」を意味する「sea」、「安らぎ・落ち着き」を意味する「ease」を合わせた名前で、海の中で言葉が伝わることで、安心を提供したいという思いを込めました。
3年間の開発期間
ロゴシーズのコンセプトは、コンパクトで着脱がしやすいこと、ケーブルレスで壊れにくいこと、いつものダイビング器材と干渉しないこと、高額でないことです。つまり、レジャーダイバーが気軽に使える製品を目指しました。
このコンセプトを実現するのには3年かかりました。最も苦労したのは、水中という、身近なようでとても特殊な環境下で開発を進めなければならないということでした。陸上であれば、既存の計測器を使って思う存分実験できますが、水中にはそういった計器類を持ち込むことができないうえに、一回の潜水で作業できる時間もせいぜい1時間ほどです。
時間も労力もとにかくたくさん費やしました。マイクの開発にも苦戦しました。そもそも水中で声を採取するためのマイクが存在せず、イチからどころかゼロから試行錯誤を繰り返しました。最終的に顔に骨伝導マイクを当てて声を採取するという方法に行きつきましたが、マイクを当てる場所によって音質や音量は大きく変わりましたし、装着できる位置も限られるなど、多くの制約がある中での開発でした。
こうして完成したロゴシーズは、2013年に世界初のレジャーダイバー用トランシーバーとして発売され、グッドデザイン賞を受賞するなど高い評価を得ました。
想定外の活躍の場
レジャーダイバーに向けて発売されたロゴシーズでしたが、販売は苦戦しました。
しかし意外なことに、レジャーダイバーより先に警察や消防の水難救助チームに受け入れられました。
一刻を争う現場において、水中で通信ができるということの重要性は明らかですから、それまでも水中用通話機器は利用されていました。ですが、既存の物は装備が大がかりだったり、有線で故障が多かったりというデメリットがありました。
一方、コンパクトで壊れにくく他の器材と干渉しにくいロゴシーズは、過酷な環境での潜水にも最適だったというわけです。既存製品と比べて格段に安価な点も、好評を得た理由のひとつだったと思います。
ロゴシーズⅡの立ち上げ
一方、レジャーダイバーに向けての販売は苦戦が続きました。
水中でしゃべって通信することのメリットは容易に理解いただけるのですが、「会話できますよ!」と言われてイメージした使い心地と実際の通話音声のイメージが違い、なかなか良さを伝えきれないことも多くありました。
ですが、開発の段階から繰り返し繰り返しロゴシーズで会話をしてきた私たちは、しゃべることも聞き取ることも、慣れて適応していけることを体感してきました。
そこで、慣れるまで根気よく使い続けてもらうために、トランシーバー機能に加えて、全てのダイバーの役に立つ機能を備えた新機種を立ち上げることにしました。そうして生まれたのが、ダイバーが管理しなければならない深度や時間などの情報を音声で知らせる「音声アラート機能」を備えた、ロゴシーズⅡです。
ロゴシーズはもともと音声を扱えますから、あとはセンサーをつけて、ダイブコンピューターと同様のアルゴリズムをプログラムすれば、それらの情報を音声で発することが可能です。
一般的なダイブコンピューターは、ダイバー自身が能動的に見て確認しなければならず、現在水深やNDLの確認がおろそかになってしまうリスクがありますが、ロゴシーズⅡの音声アラート機能を併用すれば、予め設定した深度や時間に到達したら、自動的に、しかも音声でお知らせするので、「うっかり」を防止することができると考えたのです。
音声を活用した水中用電子機器の可能性とこれから
新機種開発の始まりは、ロゴシーズを身近なものにしてもらうため(水中会話が当たり前になるため)ではありましたが、ビギナーかベテランか、レジャーかレスキューかに関わらず、誰にでも起きうる「うっかり」を予防する、まさに全てのダイバーの役に立つ、これまでにない新しい製品になったと自負しています。
音声を活用した水中用電子機器の可能性と重要性を改めて認識することにも繋がりました。
私たちはロゴシーズの開発をとおして、必要なのにまだ存在しない物をゼロから創って世に送りだすという経験をしました。
すでに長い道のりでしたし、製品としても水中通信の重要性の周知という意味でもまだまだ発展途上ですが、これまでの経験を糧にして、ダイビングを始めとしたマリンレジャーがもっと自由に、もっと楽しくなるような水中用電子機器の提供を目指し続けます。
ロゴシーズは、全ダイバーに貢献する革新的なダイビングギアを目指し、これからも進化をし続けます。今後の進化にご期待ください。